第5回「國松淳和賞」は、『シャルコーノート』(中外医学社)です。受賞おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。以下に所感を述べさせていただきます。
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2024年は、粒が揃っていたのか、たくさんの良き医書が世に出されたように思った。ただその割にというか、もっともっと、多くの人が教科書をどんどん読んで欲しいと思えた1年だった。
『シャルコーノート』は、久々に頭から最後まで飛ばさずに夢中で読んだ。非常に面白かった!! 読書体験として、抜群に面白く、受賞に値するとすぐに思った。
入念な調査、詳細で深い分析をベースに、著者の教養や博識さ、そして卓越した筆力でもって書かれたこの本は、新書のような単なる教養書のようなものとまったくならず、むしろその文章の雰囲気は文芸に近いとも言える柔らかい表現である。私見もふんだんに記述されており、なんというか、少しも読み飛ばせない雰囲気が随所にある。
企画の構造自体も大変新規性が高く、他の追随を許さない。医学出版社から出版されているわけだが、絶妙な立ち位置となる内容。神経学に関心が薄い人や、神経内科の診療に関係ない人にはあまり面白くなく思えるかもしれないが、とにかく私には面白かった。
さて惜しくも賞を逃した、
・ここからはじめる輸液・電解質管理: 「わかる」から「できる」へステップアップ(南江堂)
・みんなの脳神経内科Ver.2(中外医学社)
・医師のための処方に役立つ薬理学 診療が変わる!薬の考え方と使い方(羊土社)
・機能性神経障害診療ハンドブック 脳神経内科,精神科,総合診療科のギャップを埋める!極める!(中外医学社)
・ひとりでも書ける症例報告 クリニカルピクチャー論文のすすめ(中外医学社)
・今夜からもう困らない!夜の症状緩和(南江堂)
・在宅医のアタマの中が見える!在宅医療の道しるべ(金芳堂)
・小児栄養のトリセツ(金原出版)
・式から読み解く 臨床に役立つ生理学(中外医学社)
以上9作品も素晴らしいものだった。
「ここからはじめる輸液・電解質管理: 「わかる」から「できる」へステップアップ」は、電解質の教科書がたくさんある中で頭抜けていると思った。が、著者の辻本氏は、私の20年来の友人で年賀状までやり取りしている仲であるため受賞は不可である。
「みんなの脳神経内科Ver.2」には恐れ入った。初版は、初学者向けでいい本だな〜くらいの感想だったが、このタイミングできちんと改訂・加筆している点に、最大級の賞賛を贈りたい。多忙な臨床医が、書籍を改訂するのはとんでもない労力が要る。何より内容が良い。これからも売れて欲しい。
「医師のための処方に役立つ薬理学 診療が変わる!薬の考え方と使い方」は、極めて有用な書籍である。臨床医は、生理学や解剖学の知識が必要だが、薬理学に関しても知る必要があり本書はその導入・補完に向いている。必読と言っていい本である。
「機能性神経障害診療ハンドブック 脳神経内科,精神科,総合診療科のギャップを埋める!極める!」は、またしても著者が偉大な仕事をした、という感想である。昨年も述べたが、このテーマでまとめて”いち早く”世に出したことの意味が極めて大きい。これは、悩ましい患者を診ている臨床医にとっては非常に助かる。患者当事者もたくさん購入することになると思われるからだ。
「ひとりでも書ける症例報告 クリニカルピクチャー論文のすすめ」は、限りなく受賞に近かった。このテーマで1冊書き上げるのは、アイデアはもちろんだが、著者のやってきたこととその熱量によるところが大きい。著書に対してこの上ない賛辞を贈りたい。
「今夜からもう困らない!夜の症状緩和」は、今年の”書名賞”と言っていいだろう。書名が良いと國松賞が近くなる法則がなくはないが、書名は2024年ナンバーワンである。しかし内容は、著者らではなく、企画的にもう2押しくらい欲しかった。内科全般+精神科系というものにして分厚くすれば、研修医などの定番になった可能性がある。
「在宅医のアタマの中が見える!在宅医療の道しるべ」は、在宅医のことを知ろうと思って購入した書籍で、まったくもって書名の通りであった。単純に自分の知らないことがわかったのでよかった。
「小児栄養のトリセツ」は、ご存知小児トリセツシリーズ。栄養学は臨床医のアキレス腱であり、そこへ小児科が掛け合わされた企画である。この手があったか! とその企画力と、このテーマで書き切る著者の実力がものすごい。
「式から読み解く 臨床に役立つ生理学」は、式からという部分が印象的で斬新だったのでノミネートした。生理学の勉強は不断になされるべきで、これからもこうした好著が世に出され続けて欲しい。
あらためて、今回の國松賞受賞作品『シャルコーノート』に祝福の意を示したい。そして、第6回「國松淳和賞」の候補となろう、来年に発売される医学書に期待を込めて、今回の所感としたい。今年もお疲れさまでした。
國松 淳和